数学I・数学A
昨年よりはやや解きやすくはなっているが、分量は少ないとはいえず、煩雑な設定もあるので、時間内に解答するにはやや厳しい内容であった。昨年よりはやや丁寧な誘導ではあるが、完答にはかなりの力が必要である。
―概評―
第1問〔1〕は、近年の傾向通りセンター試験に類似した出題である。第1問〔2〕は、三角比の問題であり、これも同様にセンター試験に類似しているが、(2)では空間図形を題材とするところが珍しい。第2問〔2〕でバスケットボールのシュートをモデル化した2次関数の問題が出題された。選択問題である第3問以降は、昨年よりはやや解きやすくなっているが、誘導が少なめであることは変わらず、かなりの力が問われている出題といえるだろう。
【大問数・設問数・解答数】
・5で昨年と同じ。
・18で昨年より9減。
・96で昨年より21減。
【問題量】
・問題文の分量は昨年並みである。全体として計算量は昨年より少ないため、思考に費やすことができる時間はいくぶん増加したと思われる。しかしながら、煩雑な設定の設問もあり、また誘導の少なさも考慮すれば、今年も時間内に完答するには処理力と数学的な思考力がなお高いレベルで要求されている。
【出題分野・出題内容】
・第1問〔1〕は昨年同様、数と式からの出題であったが、センター試験と同程度の難易度である。
・第1問〔2〕は三角比の問題である。出題はセンター試験に類似しているが、空間図形が題材であることが珍しい。類題経験があると解きやすい。
・第2問〔1〕はデータの分析からの出題だが、例年通り、データの読解がメインである。昨年よりはデータを精査しなくてよいため、解答しやすい。
・第2問〔2〕は2次関数の問題であるが、バスケットボールのシュートの軌跡に着想を得た出題で、受験生は初めて見る設定であっただろう。花子さんのシュートのイラストが両手投げになっており、芸が細かい。
・第3問は確率ではなく、久々に場合の数からのみの出題であった。(4)までは比較的容易であるが、(5)、(6)は思考力が問われる。
・第4問は整数の性質の問題である。昨年同様不定方程式の整数解がテーマである。数値は比較的大きいものの、それほど煩雑な計算は要求されていないため、しっかりと準備をしていれば易しく感じられたかもしれない。
・第5問は図形の性質の問題である。円に内接する四角形の性質を適切に用いることができるかが試される。
【出題形式】
・答えを選択肢から選ぶ問題が第1問で4、第2問で9、第3問で1、第5問で5であったが、それ以外は数値を求めさせる問題である。
―難易度(全体)―
昨年に比べてやや易しくなった。高得点をとるには、ある程度の学力が必要である共通テストらしい出題である。
―設問別分析―
第1問
・小問〔1〕 数と式 難易度:標準
・小問〔2〕 図形と計量 難易度:標準
〔1〕は絶対値を含む不等式や展開の問題である。前半は計算を正しく行うことができるかどうかである。後半は得られている2式の左辺を展開し、辺々を足すことで適切な式が得られる。
〔2〕は面積や体積の最大というテーマになっている。(1)は基本的な計算問題があり、その後、面積の最大値を考える。適切な図を描くことができれば易しいだろう。(2)は基本的な計算問題があり、その後、体積の最大を考える。類題を解いた経験があれば難しくない。ただし、経験がなければ差がつくだろう。
第2問
・小問〔1〕 データの分析 難易度:やや易
・小問〔2〕 2次関数 難易度:標準
本年度は〔1〕がデータの分析、〔2〕が2次関数の設問となり、昨年度までの出題順と入れ替わっている。
〔1〕は昨年度と比較すると、散布図を注意深く見る必要がある設問はなく、用語の意味を正しく把握できていれば正答できる設問が多かった。また、分量自体も少なくなっている。ほぼ唯一の計算問題と言えるかについても、択一式の設問であるため、約分後の計算式の分母が2500以上3600以下であることに気づければ正確な値を計算せずとも正答にたどり着ける仕様となっている。
〔2〕ではバスケットボールのシュートにおけるボールの軌跡を題材に、2定点を通る上に凸な放物線の形状について主に考える問題である。受験生の側で実行するとそれなりの手間になる計算の結果を与えてその先を考察させる場面が多い。解答にあたっては図形的考察を行うことで計算を大幅に軽量化できることがある。また、所要時間の観点から、近似値をある程度大胆に評価できるかも重要である。
第3問
・場合の数 難易度:標準
近年、確率が主な題材として出題されており、場合の数は問われていても、その分量は少ない。その点、今年は場合の数についての問題となっているのが大きな特徴である。(1)、(2)は基本的な場合の数の設問である。(3)、(4)も少し考えれば正しい答えが得られるだろう。
(5)は応用問題であるが、誘導が与えられているため、これを理解し、適用できるかどうかである。図Fに対応する場合の数のうち、球3と球4が同じものになる場合の数を引くことで得られる。(6)は誘導がないが、(5)の考えを利用できるかどうかが鍵である。
第4問
・整数の性質 難易度:標準
昨年度の同分野の問題から易化したが、難易度が高かった昨年度の問題から標準的な難易度に戻っている、という見方ができる。最後の設問を除き計算の分量はあまり多くなく、計算すべき事柄も明快であり、整数に関する基本的な技術、計算力で十分解答できる。
一方で最後の設問は少し難しい。横の長さに着目し3文字の1次不定方程式を立式した後、7もしくは11で割った余りに注目して考えることになるが、思考力も問われる設問となっている。
第5問
・図形の性質 難易度:標準
作図に関する証明問題が主なテーマとなっており、似たような形式が2年前の第2日程に出題されている。
(1)は簡易的な図が与えられていることと、誘導が丁寧であることから教科書にある性質を理解できているかどうかが最重要である。
(2)は角の大きさを考える設問と、求値問題がある。自力で図を描かなければならず、(1)に比べると、少し難易度が高い。しかし、図は(1)と似たものになることと、マーク形式であるから、成り立つ性質について厳密に証明せず、予想の上で解答することもできる。(代々木ゼミナール提供)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル